名状しがたい日記のようなもの

適当なことを適当に書く感じのあれです(愚痴多め)

手が届かないから美しい

星は落ちないから美しいのなら、

貴方は私の星で間違いないし、

山岳信仰が天に近い場所だからだとしたら、

貴方は遥か高い所で輝いているのだから、

貴方は落ちない星でそれはもはや信仰なのだ。

ふと、そう思った。

 

曖昧な記憶の中の貴方。

低くて色っぽくて素敵な声で、

伏せた睫毛が綺麗で柔らかな髪の、

煙草の苦い香りすら魅力的にする貴方。

貴方と私の距離が縮まることはない。

だって貴方は星だから。

 

星は落ちてこないから星なのだ。

落ちてしまったらそれはもう、

あっという間に消えゆく流れ星か、

多大な影響を与える隕石なのだろう。

綺麗だと眺めていられるのは流れ星まで。

なぜなら私に近づかないから。

 

貴方は私の記憶する限り、私を見なかった。

見なかったというのは、いわゆるそういう目で。

そういう言動を私にしたことはないし、

貴方はとても魅力的で相手ならよりどりみどり、

いくらでも選べるような人だったから、

私なんかをそんな目で見る必要なかったんだろう。

私を見ない。

そこがとても美しくて眩しくて、

まるで星のようだと思った。

 

眩く瞬いて魅了するけれど、

どんなに手を伸ばしても届かないことが、

最初からわかりきっているから、

手を伸ばそうとも思えないひと。

落ちてくるなんてありえない、燦然と輝く星。

それが貴方。

 

記憶が曖昧なまま時間だけが過ぎていって、

どんどんどんどん時が進んで、

貴方の中の私はどれだけ薄れただろう。

曖昧な記憶の中でも貴方は輝いている。

でも、曖昧なままだから、

私が貴方に近づくことはまずなければ、

貴方が隕石のように落ちてしまうことも、

もちろん私めがけて落ちてくることもない。

だから私はあのセリフを言えない。

 

いつか記憶が曖昧でなくなったり、

何かの拍子で凄い勇気が出たら。

私は星に手を伸ばせるんだろうか。

きっとそんなことはないんだろうな。

きっと、うじうじしながら星を想うだけだ。

だって貴方は星で、私は出る杭どころか、

地中深く自動で潜って腐る杭なんだから。

 

手に入れられなくとも触れられたら、

とつい願ってしまうたびに、言い聞かせる。

あのひとは星。

落ちてこないから綺麗なの。

落ちたら星じゃなくなってしまう。

綺麗な星のままでいてもらわなきゃ、って。

それがあのひとの、星の在り方なんだから、って。

 

美しい星、いつまでも、高い所で輝いていて。

たとえ私の目に入らなくとも