名状しがたい日記のようなもの

適当なことを適当に書く感じのあれです(愚痴多め)

観る、という自傷行為

金曜ロードショー、竜とそばかすの姫。

映画館で見て、不意打ち食らって、

精神的にめちゃくちゃ不安定になったけど、

でも世界観と曲はめちゃくちゃ好きで。

放送が延期になる前も見るかどうか、

めちゃくちゃ迷った。

延期してからもめちゃくちゃ迷った。

迷ってるうちに日にちを忘れて、

きっともう放送されたんだと思ってた。

最近の私は精神的に不安定なせいで、

感覚が過敏になっているから、

テレビをほとんどつけないから、

そのうちに終わってたんだろうな、と。

でも、今日だった。

直前まで迷った。

見た。

 

やっぱり、めちゃくちゃ傷を抉られる。

これはもう、自傷行為だなって、思った。

観るという自傷行為

傷つくとわかっていて、それでも観る。

自分で自分を傷つける行為なのだから、

自傷行為であると思う。

 

どれくらいの人があれをみて傷つくだろう。

きっとほとんどの人は傷つかないだろう。

傷つく人は、きっと少ないんだろう。

だからなんの触れ回りもなしに、

虐待描写が急に出るんだろうと思う。

それも、虐待を受けていて助けてもらえない、

助けを求めているのに助けてもらえない、

リアルな被害者の描写が。

 

わかっていたけど、やっぱり抉られた。

ケイくんの、助ける助ける助けるを繰り返し、

誰も実際には助けてくれないと訴えるところ。

本当に理不尽だけれど、リアルだと思う。

私も虐待を受けた側の人間で、

助けを求めても助けてもらえなかった人間だから、

当時思っていたことと全く同じで、

どうせ誰も助けてくれない癖に、

わかったような口きいて同情して見てんなよ、

っていう思いがすごく胸で疼いて。

本当に苦しくなる。

 

すずだって、つらいのはわかる。

事情は違うけど、私も片親だったから。

物心がついてから、それも目の前で、

親が死んだらそれはもちろんつらいだろうし、

親と一緒に楽しんだ歌だって、

歌えなくなってもおかしくないと思う。

 

そのすずが、竜であるケイくんに心惹かれて、

知りたいと思って、助けたいと思って、

ありし日の母のように踏み出して、

ケイくんとトモくんを守るのは、すごい。

行動力も、物怖じしなさも。

素直にすごいと思う。

 

でもね、やっぱり、だめなんだよ。

半端なんだよ、描写が。

ねえ、なんで竜兄弟を完璧に助けてくれないの?

奇跡がたくさん起こるのはいいよ。

人に惹かれるのに理由なんてなくていいよ。

何もしてないすずに竜父が急に恐れをなして、

腰抜かして逃げたって、別にいいよ。

けどさ、改めて見ても、いくら考えても、

救いが完璧じゃないんだよ。

 

竜父はおそらく、自分を恐れずに、

真っ直ぐと立ち向かって動じないすずの気迫に、

言い知れぬ恐怖を感じたんだと思う。

圧倒的だった父親が、

普通の女の子が立ちはだかっただけで、

腰を抜かして逃げたところを見たことで、

ケイくんが何かに気づくのも、わかる。

 

でもね。

やっぱりいくら考えても描写が足りない。

たぶん、48時間は経過してないのに、

すずは地元に帰って。

決意をしたケイくんと、トモくんを残して。

家には父がいるのに。

なんの決意をしようが、

父とケイくんの体格差は圧倒的で、

言葉じゃなくて物理的な暴力になれば、

敵うわけもないのは目に見えてるのに。

ケイくんはトモくんを庇わずにいられないのに。

庇ったら、反撃なんてもっと難しいのに。

そこに父が恐れるすずはいない。

虐待をする側にも、される側にも、

染み付いたものがあって簡単には消えない。

される側は恫喝されれば体が竦むし、

する側はそれを見て優位だと、勝てると思う。

ねえ、わかりきってるでしょ?

体験なくたって想像すりゃあわかるでしょ?

なんで、助かるところまで描いてくれなかったの。

 

描写が省かれてるだけで保護されたの?

二人は安全なところにいけたの?

ねえ、でもケイくんの決意は?

保護が確定してたら、

立ち向かう決意なんて、必要ないよね。

あの二人は、これからどうなるの?

悲壮なまでに裏切られ続けて、

助けをもみ消されてきたケイくんは、

一部の感情が欠落してしまったようなトモくんは、

どうなるの?

 

すずは二人を助けに行くことで、

母親の死や、それによって歌えなかったこと、

しのぶくんや父親との関係性など、

さまざまな鎖から解放されて、

最後みんなと一緒に歌ってエンディング。

きっと彼女は人並みに幸せになれる。

でも、トモくんとケイくんは?

 

そもそもヒロインはすずで、ヒーローは誰なの?

竜なの?しのぶくんなの?

おそらく竜ことケイくんなんだろうと思うけど、

だったらもっと細かく最後まで描写してよ。

思春期の揺れ動く心、別にいいよ。

好きな人が何人いようが、別にいいよ。

助けてあげてよ、完璧にさ。

その後の嫌な想像なんてできないくらい、

完璧に助けてあげてよ。

 

だって、私も助けて欲しかった。

すずみたいに手を差し伸べてくれる人も、

私にはいなかったけど。

たった一人手を差し伸べてくれただけで、

それだけでどうにかなるほど甘くなかった。

もっとたくさんの人の手が、

もっと具体的な救出策が、必要だった。

私はそれがなかったから助けてもらえなかった。

 

思い出してしまう。

重なる。

私と、竜が、ケイくんが。

私がすずに重ならないのは、

彼女が立ち直れているからだと思う。

彼女は強い。

でも、私は立ち直れていない。

 

バウムクーヘン

同じサイズの包丁を同じ深さだけ刺したら、

小さくて薄いバウムクーヘンの方が損傷が大きい。

何度も刺されてボロボロになった小さなそれに、

上から生地を何度も重ねて焼いても、

完全に元には戻らない。

虐待って、そういうやつ。

 

だからこそ、思う。

最後、二人が幸せになった描写が、

せめて安全な所に移れた描写が、少しでもあれば。

本当にハッピーエンドだって、思えたのにな。

 

本当に、観る自傷行為だな。

約二時間、目で、耳で、自分を傷つける。

わかってた、見たら傷つくって。

でも違う見方出来るかも、とも思ったし、

曲も好きだしなって。

そういうところも本当、自傷行為だと思う。

体に傷つくってわかってるけど、

血が流れてるのみれば落ち着くかもしれないし、

痛みが私の心を癒してくれるかもしれない、

傷痕は私のお守りになるかもしれない。

いつもそう思って私は私の身体に傷をつける。

からしたら似たようなもんだ。

 

できることならリメイクしてほしい。

最後にほんの少しだけでいいから、

安全なところで二人微笑むところが見たい。

父親がいないところで体をリラックスさせて、

トモくんの表情のバリエーションが増えて、

ケイくんは肩の力が抜けて優しく微笑んで。

もう大丈夫だよ、ありがとう、助けてくれて。

そう、二人が言う。

それだけでいい。

 

今後放送されたら、私はまたみるのかな。

だとしたら、末期だな。

自傷行為だとわかりつつもやめられないなんて。

まぁ、元からそういう節はあるけど。